氷の公爵は、前世の婚約者を許さない
あらすじ
前世で婚約者を「退屈」と切り捨てた私は、死の間際に走馬灯で真実を知った。 ──彼が、どれほど私を愛していたか。
転生先で再会した彼は「氷の公爵」と呼ばれる別人だった。 笑わない。話さない。誰も近づけない。 あの春の陽だまりのような人を、こんな氷に変えたのは私だ。
今度こそ素直になりたい。「好き」と伝えたい。 ──なのに、この口はまた毒を吐く。
「あなたなんか、大嫌いよ」
政略婚の候補として面会を重ねるたび、言いたい言葉と反対のことばかり。 それでも彼の手は前世と同じだった。ショールを直す仕草。花を摘む指先。不器用で、丁寧で。
氷の下に、まだ春がある。
彼が前世の記憶を取り戻した夜、全ての嘘が剥がれた。 「許さない。だが──手放しもしない」
前世で一度も言えなかった言葉を、今世でようやく。