剣で斬った数より、この傭兵に抱かれた夜の方が多いなんて聞いてない
あらすじ
「帝国の牝狼」と呼ばれる最強の女騎士カティアには、五年間の秘密がある。 雇っている傭兵ガルドと、戦場の後に必ず──抱き合う。
名前はない。契約にも書いてない。 アドレナリンが行き場を失って、いちばん近い肌を求めるだけ。 それだけの関係。それだけの、はずだった。
「報酬は弾んでくれよ」 「黙れ」
背中合わせで斬って、鎧を脱いで、互いの身体で生存を確認する。 好きだからじゃない。ただ生きていることを確かめたいだけ──
過去最高難度の魔獣討伐。死闘の果てに、ガルドが致命傷を負った。 私を、庇って。
「なぜ庇った。契約にそんな指示は入ってない」 「……契約外だった。あれは」
帝国最強の女騎士は、戦場では泣かない。 なのにこの夜──傭兵の腕の中で、初めて震えた。
いつもの荒々しい「生存確認」じゃない。 手が震える。傷を避けて触れている。指を絡めている。 五年間、一度もしなかったことを、している。
「今度は違うぞ」 「何が」 「報酬じゃない。これは」
剣では斬れない感情に、ようやく名前がついた夜の話。