安全な先生に安全な場所で孕まされる話
あらすじ
桐島みこと──高校3年生。声が小さい。人が多い場所が苦手で、週に3日は保健室登校。前髪で目を隠して、白いカーテンの内側だけが彼女の居場所だった。
須藤一慧──29歳。養護教諭。生徒から「シロクマ先生」と呼ばれる穏やかな男。絶対に怒らない。絶対に触れない。──絶対に、触れてはならない。
先生には、みことに対してだけの「5つのルール」があった。 絆創膏は指で挟んで渡す。検温は手袋を二重にする。隣には座らない。頭は撫でない。カーテンは必ず引く。
──その全部が、「触れたら終わる」自分への戒めだったことに、みことは気づいていなかった。
年に一度の身体測定。二人きりの保健室。ブラウスのボタンが外れた瞬間──消毒液で守られた安全な空間に、亀裂が入った。
「声じゃなくて。手で──」
右手の手袋を外した。左手の手袋を外した。二重の壁が、消えた。
保健室は世界で一番安全な場所だった。 ──安全な場所で、安全な人に、壊された。
翌朝。保健室は元通りだった。シーツは新品。消毒液の匂いが戻っている。 ──ただし体温計だけが、棚の中で3センチずれていた。
心拍68。 ──嘘だ。でも、二人とも68ということにした。