明治の華は隻眼紳士の籠の鳥
あらすじ
明治三十年代、新橋で「至宝」と謳われた若き天才芸妓・吟千代。彼女は、凛とした美貌と圧倒的な芸事、そして金剛石のごとき「口の硬さ」で、政財界の重鎮たちから絶大な信頼を得ていた。 そんな彼女の前に現れたのが、謎めいた貿易商・如月慎一郎である。左眼の眼帯と洗練された紳士の振る舞い、そして微かなシガレットの香りを纏う如月に、吟千代は密かに心を寄せ始める。しかし、平穏は帝国ホテルの晩餐会で崩れ去った。泥酔した英国士官が、吟千代の妹分・千代松に暴行を加えたのだ。 不平等条約の壁を前に、怒りと絶望に震える吟千代。その窮地を救ったのは、狡猾なまでの手腕を見せた如月だった。彼は士官の醜聞を盾に問題を収束させ、自ら「恩」を売る。翌日、置屋「吟月」を訪れた如月は、戦慄する吟千代と女将に、法外な小切手を差し出し究極の選択を迫る。 それは、妹分と置屋を救う代償に、新橋の至宝・吟千代の名を捨て、如月個人の所有物「小夜」として生きること。吟千代は愛する者たちを守るため、自ら自由を投げ出し、如月の用意した「金色の籠」へと足を踏み入れる。