新婚ですが、鼻輪が外せません
あらすじ
婚姻届を出したあとも、生活は思ったより普通だった。冬は寒いし井野は忙しい。ただ、名前を書くたびに少しだけ変な感じがした。そうこうしているうちに年が明け、春の異動が決まった。井野はわりと普通の顔で「官舎入れるらしい」と言い、あたしは「へえ」と答えた。その時点では、まだ他人事みたいだった。国家公務員の官舎に、鼻輪をつけたまま入る。実感が湧いたのは、段ボールの山を前にして、あたしが自分の鼻先の輪っかを指で持ち上げながら「これ、まずくない?」と言ったときだった。
本編終盤で結婚した井野と吉川の、その後の新婚生活を描いた短編集です。 刺青も鼻輪も消えないまま、二人は官舎で暮らしはじめました。 だいたい普通ですが、見られたり困ったり、ときどきややこしくなります。