砂漠の影と金の仮面 〜監視者と監視対象の、嵐の天幕〜
あらすじ
【一目惚れの砂漠の副官 × 素直になれない帝国の情報士官】
帝国の情報士官リヒト・エルドマンは、幼馴染を守るために一本の矢を放ち、その日にすべてを失った。
砂漠に流れ着いた彼の監視を命じられたのは、部族の副官ラシード。寡黙で、言葉より先に体が動く男だった。
リヒトは拒んだ。水も、食事も、視線も。帝国が二十五年かけて仕立てた鎧を、砂漠の誰にも触らせるつもりはなかった。
だがラシードは何も言わなかった。天幕を張り、水を置き、ただそこにいた。理由も聞かず、見返りも求めず。
嵐の夜。熱の夜。互いの名前を口にした夜。
帝国が教えた作り笑いの下で、リヒトの顔が動く——本人が気づくより先に、ラシードが、それを見ていた。
見られたくなかった。見られていると分かっていた。それなのに、あの男の前でだけ、鎧の隙間が、確かに広がっていく。
人の心を読むことで生きてきた二人の男が、初めて、互いに読まれていた。
砂漠の夜は長い。天幕の中の距離は——短い。
──
※R-18描写あり(該当話に注意書きします)
※ 前作『砂漠の覇王と折れた銀剣』と共通の世界線で、前作主人公たちも登場しますが、本作のメインは別の二人です。単体でも楽しめますが、前作をご覧いただくとより深く味わえます。